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山口慎太郎氏著『子育て支援の経済学』:勝手に新書-7

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少しずつ、よくなる社会に・・・


『子育て支援の経済学』山口慎太郎氏著:同氏の少子化対策に注目


今月初め、https://2050society.com に
2021年の出生数約84万人、死亡数約145万人、人口減少数初の60万人超:2021年人口動態統計速報値(2022/3/2)
と題した記事を投稿しました。
少子高齢化社会の進行は、高齢化により減少する出生数を遥かに上回る死亡数により、人口減少を伴います。
少子化は、既に21世紀に入った段階早期から懸念され、対策・政策の必要性は、特に2010年代に入り強調されてきていますが、成果・効果どころか、一向に回復の兆しは伺えません。
そして長引く新型コロナウィルスのパンデミックが及ぼす経済的・心理的な要因が、この記事で取り上げたように、より少子化を深刻化させています。

そうした中、昨年1月に出版された山口慎太郎氏による『子育て支援の経済学』(2021/1/20刊・日本評論社)を知り、先日入手しました。
同氏の前著『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(2019/7/30刊・光文社新書)を発行時に入手して読んでいますし、日経氏にも度々同氏執筆小論も掲載され、目にしていることもあり、関心を持ち入手。
現在、読み始めたところです。

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同書の構成(目次)は次のようになっています。

『子育て支援の経済学』構成

はじめに
第1部 子育て支援で出生率向上
第1章 なぜ少子化は社会問題なのか?

1.はじめに
2.出生率とは
 2・1 出生率の推移
 2・2 出生率の国際比較
3.少子化問題は政策による解決が必要
4.おわりに
数学補論:低出生率の原因は市場の不完備性
第2章 現金給付で子どもは増える?
1.はじめに
2.家族関係社会支出の国際比較
3.経済学で考える現金給付の出生率引き上げ効果
 3・1 子どもの「質」と「量」
 3・2 税制上の優遇措置の影響
 3・3 育休制度の影響
4.政策評価のための実証分析
 4・1 地域差を利用した差の差分析
 4・2 制度の対象者と非対象者を比較する差の差分析
 4・3 制度の変更前後を比較する回帰不連続デザイン
5.実証分析が示す現金給付と育休政策の効果
 5・1 現金給付
 5・2 育休制度
6.おわりに
数学補論:子どもの「質」と「量」についての理論モデル
第3章 保育支援で子どもは増える?
1.はじめに
2.世界各国の保育政策
 2・1 保育所増設
 2・2 価格引き下げ
 2・3 家庭保育への支援金
3.経済学で教える保育政策の出生率引き上げ効果
4.政策評価の考え方
5.実証分析が示す保育政策の効果
 5・1 保育所増設の効果
 5・2 保育料金引き下げの効果
 5・3 家庭保育支援金の効果
数学補論:保育政策と出生行動の理論モデル
第4章 少子化対策のカギはジェンダーの視点?
1.はじめに
2.経済学で考える夫婦間の意思決定
3.実証分析が示すより効果的な少子化対策
4.おわりに
数学補論:夫婦間の家事・育児負担と出生選択の理論モデル

第2部 子育て支援は次世代への投資
第5章 育休制度は子どもを伸ばす?

1.はじめに
2.世界各国の育休制度
3.経済学で教える育休制度の役割と効果
 3・1 なぜ制度としての育休が必要なのか
3・2 理論が予想する育休の効果
4.政策評価の考え方
5.実証分析が示す育休制度の効果
6.おわりに
第6章 幼児教育にはどんな効果が?
1.はじめに
2.経済学で考える子どもの発達
3.保育には政治介入が必要だ
4.「保育の効果」を定義する
5.社会実験プログラムからの知見
 5・1 プログラムの概要
 5・2 プログラムの効果
 5・3 費用対効果分析
 5・4 効果の解釈への注意
6.大規模プログラムからの知見
 6・1 社会実験プログラムの限界
 6・2 大規模プログラムから読み解く保育の効果
 6・3 プログラムの効果
7.おわりに
数学補論:幼児教育の人的資本モデル
第7章 保育園は子も親も育てる?
1.はじめに
2.経済学で考える保育所通いの効果
3.保育所拡充の背景
 3・1 日本の保育制度
 3・2 認可保育所の拡充
4.政策評価の考え方
5.保育政策と親子の状態をデータでとらえる
 5・1 21世紀出生児縦断調査
 5・2 子どもの発達指標
 5・3 母親の行動・精神状態の指標
 5・4 自己申告も意外と当てになる
 5・5 子どもの日中の保育者と母親の就業状態の組合せ
6.実証分析が示す保育所通いの親子への効果
 6・1 効果の分かれ道は家庭環境
 6・2 なぜ保育所通いは子どもの発達を促すのか
7.おわりに
推定結果の詳細

第3部 子育て支援がうながす女性活躍
第8章 育休で母親は働きやすくなる?

1.はじめに
2.経済学で考える育休制度の就業支援効果
3.政策評価の考え方
5.実証分析が示す育休制度の就業支援効果
 4・1 オーストリアにおける育休改革の効果
 4・2 その他の国々における育休改革の効果
5.おわりに
第9章 長すぎる育休は逆効果?
1.はじめに
2.日本の育休制度の変遷
3.データと記述統計による分析
 3・1 データの概要
 3・2 データからわかること
4.現実をとらえる構造モデル
5.構造モデルが示す女性の就業決定
6.育休3年制のシミュレーション
 6・1 育休政策の効果
 6・2 その他の家族政策の効果
7.おわりに
第10章 保育政策で母親は働きやすくなる?
1.はじめに
2.経済学で考える母親の就業
3.保育政策の効果をどう測るか
 3・1 差の差分析(1):一部の地域だけが保育改革
 3・2 差の差分析(2):全地域で保育改革
 3・3 回帰不連続デザイン
4.実証分析が示す保育政策の効果
 4・1 諸外国の保育改革の効果
 4・2 改革前の母親就業率
 4・3 代替的な保育手段
 4・4 非労働所帯
5.おわりに
数学補論:母親の就業意思決定の理論
第11章 保育制度の意図せざる帰結とは?
1.はじめに
2.日本の保育制度と利用調整
 2・1 保育所と保育制度の概要
 2・2 利用調整
 2・3 待機児童解消に向けての取り組み
3.保育政策と保育所利用をとらえるデータ
4.都道府県データと家計データによる実証分析
5.実証分析が示す保育政策と保育所利用の効果
 5・1 都道府県データをもちいた分析
 5・2 都道府県データをもちいた分析
6.おわりに
推定結果の詳細

付録 実証分析の理論と作法
A 因果推論
 A.1 差の差分析 A.2 操作変数法 A.3 回帰不連続デザイン 
B 限界介入効果の推定
C 構造推定:構造モデルの構築とその推定方法


本書は、先述の
「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』の続編とも言えるものです。
比較する上でも、その先行書の構成(目次)をラフに、以下紹介しておきたいと思います。

『「家族の幸せ」の経済学』の構成 

第1章 結婚の経済学
1.人々は結婚に何を求めているのか
2.どうやって出会い、どんな人と結婚するのか
3.マッチングサイトが明らかにした結婚のリアル
第2章 赤ちゃんの経済学
1.出生体重は子どもの人生にどのように影響を与えるのか
2.帝王切開は生まれてくる子どもの健康リスクになるのか
3.母乳育児は「メリット」ばかりなのか
第3章 育休の経済学
1.国によってこんなに違う育休制度
2.お母さんの働きやすさはどう変わる?
3.育休と子どもの発達を考える
4.「育休3年制」は無意味。1年がベスト
第4章 イクメンの経済学
1.日本は、制度だけ「育休先進国」
2.育休パパの勇気は「伝染」する
3.育休で変わる家族のライフスタイル
4.では、夫婦の絆は深まるのか
第5章 保育園の経済学
1.幼児教育の「効果」について考えてみる
2.家庭環境と子どもの発達
3.保育園は、母親の幸福度も上げてくれる
4.無償化よりも待機児童解消を急ぐべき理由
第6章 離婚の経済学
1.「3組に1組が離婚している」は本当か?
2.離婚しやすくなることは、不幸だとは限らない
3.離婚は子どもたちにどう影響するか
4.共同親権から「家族の幸せ」を考える

率直な気持ちを申し上げると、このように「○○の経済学」と名のつく書は、あまり好みません。
好き嫌いで論じるのは不謹慎であることは承知していますが。
こういう先入観をもって本書に臨むのも同様ですが、実は、以前、『子育て支援の経済学』と同類の書『子育て支援が日本を救う 政策効果の統計分析』(柴田悠氏著・2016/6/25刊・勁草書房)を読んで感じたこともその理由の一つになっています。

しかし、いずれ山口氏のこの書を対象として少子化対策を検討しますが、このとき、柴田氏のこの書も併用して検討・考察すべきと考えています。
その折り、同書の構成も示して、EBPM Evidence-Based Policy Maiking 実証結果に基づく政策形成 について考えることにします。

なお、結論を先行させる気持ちはありませんが、参考までに、<少子化社会対策大綱>を踏まえて論じた以下の過去記事を挿入しておきます。

(参考)
「2020年少子化社会対策大綱」批判-1:批判の後に向けて(2020/6/18)
「少子化社会対策大綱」批判-2:少子化社会対策基本法が無効施策の根源(2020/6/25)
「少子化社会対策大綱」批判-3:少子化の真因と究極の少子化対策BI(2020/7/13)
「少子化社会対策大綱」批判-4:安心して子どもを持つことができるBI、児童基礎年金支給を早期に(2020/7/28)

(参考)
⇒ 「山田昌弘氏著『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』で考える絶対不可欠のBI論」シリーズ:2021年発刊新書考察シリーズ振り返り-3(2021/12/24)

<勝手に新書>とは

 昔、アパレル・チェーンストア企業に勤務し人事・能力開発担当だった頃、市販のアパレル通信教育プログラムと自分で作成開発した自企業社員向け教育プログラムを一体化して活用。
 そのための添付作成した副教材のコラムに<勝手に新書>と題して、自己啓発用に1冊ずつ新書を紹介しました。
 そのタイトルに少し手を加えて、40数年ぶりに復活させて、これからネットで注文したての新書を中心に当サイトにメモ書きしていくシリーズです。
 新書でない場合もあるのでその場合は選書。
 どちらも新刊書中心なので、新鮮書、というわけです。
 と初めは「しん・せん書」と言っていましたが、意味不明気味なので、単純に「新書」と一本化しました。
 今回はその第7回、7冊目です。

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