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金利変動型住宅ローンの罠:インフレ加速による金利引き上げリスクに怯える
少しずつ、よくなる社会に・・・


デフレ・低金利下に膨張した住宅ローン融資残高、220兆円超
当然のように住宅新築時に組むローンだが、そこでの低金利が、新築需要増を後押ししてきたことは明らかであり、融資残高の膨張もそれに並行する。
2022年6月末の残高が220兆円。
問題は、そのローンを組むに当たって返済利息の利率である。
故安倍元首相主導のアベノミクスに呼応しての日銀黒田氏の異次元緩和策で、マイナスにまで低下した金利の恩恵を最も受けたのが、こうした住宅ローン利用者。
その際の返済利息の利率には変動型と固定型があり、どちらかを選択する方式という。
当然、固定型を選べば、変動型を選択した場合のスタート時点より高い利率になるだろう、
長期的にみれば、先行きの金利引き上げリスクには関係なく一定の利率・利息が維持され、安心感はある。
異次元の低金利を考えれば、その後利率が上がると想定すべきだが、住宅金融支援機構の4月調査では、約74%の人が、変動型金利を選んでいるという。
また、別調査によると、2020年度新規融資は約77万件で、ここでも変動型金利を選択するケースが50万件をゆうに上回ると想定される。

利上げリスクに怯える局面に
失われた20年、30年と否定的に用いられ、表現される長期のデフレ経済下にあって、恩恵を受けた少ない例が、住宅ローン利用者であったわけだが、いよいよその利率変動の可能性が高まってきた。
コロナ、ロシアのウクライナ侵攻を大きな経済・景況転換のきっかけとし、欧米のインフレの加速と並行しての相次ぐ利上げ。
日本では、やせ我慢と言うべきか、利率引き上げが招くショックの大きさを考えざるを得ないためか、ダラダラと未だに金融緩和策を継続せざるをえない状況だ。
物価高、インフレは間違いなく殆どの人々の日々の生活と多くの企業収益を圧迫している。
欧米では、これをきっかけに賃金が引き上げられ、インフレ促進、金利引き上げ、インフレ抑制、と一応想定可能だ、
理想的に運ぶことは少ないかもしれないが。
因みに、米国では住宅ローンを組む際の利息は、固定型が主流とされる。
しかし、日本は、自由主義・資本主義国家として例外的に、不況下の物価高、スタグフレーションの様相を呈している。
もし、ここで金利が0.1%上昇すれば、試算によれば国内全体で利息負担が約1100億円増えるという。
個々人のレベルでも負担増は大きく、しかも、一旦上がり始めれば、その傾向は継続されると予想され、賃金が上がらなければ、厳しさが増す。
既にコロナ禍で就労機会や所得機会を減少・喪失した人の中には、ローン物件を手放さざるを得なくなった人もいるに違いない。
実際に、コロナ禍の約2年半で10万件超がローンの返済猶予等を受けたという。
ここに、金利・利息アップリスクが高まりつつある。

資産としての住宅、消耗品としての住宅
日経記事でこの問題を取り上げた際には、日米間の住宅資産の捉え方の違いを指摘している。
アメリカでは住宅は資産と評価し、中古市場も活発であり、住宅市場の約80%を中古が占める。
すなわち、購入後に適切に管理すれば、資産価値が上昇するのも一般的。
一方日本は、新築志向が強く、中古シェアは15%弱にとどまり、消費財の感覚が近い。
住宅ローンは増えるが、それに対して住宅の資産価値は増えないどころか、2020年には前年比で下落しているという。
そこで、既存の住宅を活用する『ストック型市場』への転換へ本格的に取り組むべきであり、個人も資産価値が残りやすい住宅を選ぶ意識を持つべき、と提案するが、そう簡単にはいくまい。
日本では、融資に当たり、物件価値の精査よりも、個人や世帯の収入に重点を置く審査が普通であり、ストック・資産を想定するのは、融資側が、返済不能になった場合の処理・対策として融資物件の価値をどう見るかという視点が残るに過ぎないだろう。
それが資産評価型住宅市場の一つの基準を示すような建設的なきっかけになれば良いのだが、金融機関にそこまでの責任感や使命感はあるまい。
歪な住宅事情、歪な住宅行政・住宅政策
一方で、空き家物件問題や、低所所得者層の住宅問題が存在する。
歪な構造を抜本的に変えていく取り組みは、国がめざす方向を示し、業界をリードしていくべきと考えるが、そんなことを考える政党や政治家がないのが、わが国の最大の問題である。
縦割りの行政に期待できるはずもない。
https://2050society.com における課題として、今後追いかけていきたい。


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