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コマーシャリズムが支えるツイッター買収のイーロン・マスク、想定外の広告減で大幅人員削減。筋書きに綻び?
少しずつ、よくなる社会に・・・

ツイッター買収におけるコンテンツモデレーションと大幅人員削減との関係
総額440億ドルに上るツイッター 運営会社の買収をめぐり、いったん撤回し、その後また合意内容を再提案するなど、すったもんだがあったが、10月27日にツイッター買収を終えたイーロン・マスク。
同日同時に、CEOを含む9人の幹部全員を解任し、11月4日以降、世界的規模で従業員の半数のレイオフも行なった。
この中には、日本の広報部門従業員全員の解雇も含む。
同氏のツイッター 買収は、投稿管理が行き過ぎであるとの問題意識から乗り出したことに端を発する。
買収そして大規模なレイオフ実施後、基本的に投稿監視・削除等に反対する同氏の方針を体現するようにツイッター上で嫌がらせや差別的投稿が急増しているという。
ヘイトや人種差別等言論・表現の自由等に関する論争に、自身のスタンスを反映させるべく買収したツイッターだが、当然、人権問題に関する彼の方針に反対するグループ・勢力の今後の動向が注視されることになった。
基本、SNSは広告収入を事業の軸としている。
その収益と今後の事業展開において検討するとされるサブスクリプション継続課金制による収益が、根本的な買収目的であることは自明のシンプルなビジネスモデル。
しかし、かの人権問題団体や活動家が黙ってはいなかった。
11月に入って間もなく、同氏は、買収後に同社の広告収入が急減していると明らかに。
その原因は、フリープレス等多数の市民団体が、11月に入り、大口広告主宛、同氏がSNSの安全性を損なう計画を実行した場合、全世界レベルで広告出稿停止を要請したためと批判。
独アウディ、米ファイザー、ゼネラル・ミルズ等がこれに応じ、広告出稿を一時停止している。
この検閲問題。
「コンテンツモデレーション」と呼ぶ、不適切な投稿の監視・削除規制が行き過ぎとしてTwitter 買収を仕掛けた根底には、言論・表現の自由を守る、という大義名分があったわけだが、投稿表現規制と削減は、広告機能すなわち収益の最大化に逆行するものであることは明らか。
先述したように、ネット事業の多くは、サブスク型サービスを採用するのが通常で、同氏も早晩そのモデルを打ち出すだろうが、現状では、売上高の90%超が広告収入。
それだけに、嫌でも広告主サイドの意向に何かしら沿う必要がでてくる。
こういう状況下、市民団体の強気と広告主企業サイドの対応に対し、彼の不満・憤懣が高まっているという。
成功者としての自身に絶対的な自信と独断・専制指向をもつ彼のこと。
早晩剛腕に物を言わせて、その利権を守るべき対策を打ってくるとは思うが、このところ、自分のペースで事が運ばない例が続いている。

ウクライナ支援のスターリンク無償提供打ち切りと撤回をめぐるイーロン・マスクの苛立ち
先般は、ロシアのウクライナ侵攻において、ウクライナが利用していた彼創業のスペースXの人工衛星を使ったネット接続サービス「スターリンク」の無償提供を打ち切ることを発表。
その以前に、ロシア・プーチン大統領とコミュニケーションを持ったとも報じられ、ロシア有利の発言やツイッターを利用してのウクライナ侵攻をめぐるアンケートを実施したことがロシア支援とみなされ、批判を浴びることに。
素人考えでは、その費用については、バイデン政権が何らかのバックアップを当然していると思えたのだが、スペースXサイドの自腹、無償提供だったという。
その費用負担は、現在は2万台規模に増えたスターリンク端末を含め、既に8000万ドル(約118億円)に達し、年末までに1億ドルを超える見通しという。
ウクライナの軍事作戦を支える重要な通信基盤となってきた事実をみれば、貢献度は極めて大きいのだが、こうも簡単に批判を浴びせられたことで、泣きを入れつつ、前言撤回に至った。
スペースXからウクライナ支援の費用負担を求める書簡を受け取った米国防総省、そしてバイデン政権とどんな裏取引がなされたか分からないが、10月15日には同国ウクライナ政府への資金提供の継続を表明することに。

グローバル・コマーシャリズム極限化の時代
今月に入っての人員削減は、広告収入の激減で、1日あたり400万ドル約6億円超の損失発生によりやむを得ないもの、としている。
ただ、同運営会社の報告書によると、2021年12月末の社員数は約7500人で、3年間で約9割の増。
その増え方そのものも異常で、そのコストのほとんどすべてが広告収益に依存しているというビジネスモデルも異常というべきだろう。
ツイッターに限らず、SNS及びネット事業の多く、身近なところでは、目標とする職業?の人気ナンバー1になっているYoutuber も広告収入が魅力で、その市場に個人も企業も群がっている。
資本主義が生み出した異常な社会経済システムが一ある種の極限に達しているのが、このグローバル・コマーシャリズム。
「いいね」の基準と使い方も異様に多様化・拡張化し、善悪も、正誤も、その境界線・分断線が入り乱れ、交差し、判読・判断がつかなくなっている時代。
物と金の偏在が、グローバル・コマーシャリズムの勢いを加速させ、経済のみならず政治と権力の一層の不安定さをもたらしている。


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