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ベーシックインカム論の教科書、ガイ・スタンディング氏著『ベーシックインカムへの道』考察シリーズ、全13回を終了:2022年書籍記事シリーズ紹介ー6

少しずつ、よくなる社会に・・・


ベーシックインカムの教科書というべき、ガイ・スタンディング氏著『ベーシックインカムへの道 ―正義・自由・安全の社会インフラを実現させるには』(池村千秋氏訳、2018/2/10刊・プレジデント社)について紹介し検討するシリーズ。
「日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金」制度の導入を提案する専門サイト、http://basicpension.jp で、先月2022年11月5日から開始し、ようやく今月12月19日に、当初予定の全13回にわたる以下の投稿を終えました。

<第1回>:ガイ・スタンディング氏著『ベーシックインカムへの道』の特徴と考察シリーズ基本方針(2022/11/5)
<第2回>:ベーシックインカムの定義と起源・歴史を確認する(2022/11/10)
<第3回>:ベーシックインカム導入目的は社会正義の実現のため?(2022/11/13)
<第4回>:なじめない「リバタリアン、共和主義者による自由のためのベーシックインカム論」(2022/11/14)
<第5回>:貧困問題から生活の経済的不確実性対応のためのベーシックインカム重視へ(2022/11/29)
<第6回>:経済成長政策、AI社会雇用喪失懸念対策としてのベーシックインカム(2022/11/30)
<第7回>:経済学者のベーシックインカム経済論としては低評価(2022/12/3)
<第8回>:ベーシックインカム以外の選択政策評価基準「社会正義」の不都合(2022/12/4)
<第9回>:多くの財源論が展開されてきた欧米で未だ実現しないベーシックインカムのなぜ?(2022/12/6)
<第10回>::ベーシックインカム批判への反論の多くが「質問返し」の残念!(2022/12/8)
<第11回>:途上国のベーシックインカム推奨よりも優先すべき問題先進国BI(2022/12/14)
<第12回>:ほとんどが反対論の材料になりがちなベーシックインカム試験プロジェクトの半端度と独善性(2022/12/17)
<第13回>:ベーシックインカムの教科書は、道を拓くことができるか(2022/12/19)

ここ数年のベーシックインカム論の考察

日本語訳が発刊されたのが2018年2月ですから、原書の執筆及び発刊は2017年以前。
それから既に5年は経過しており、この間、日本においてベーシックインカムをめぐる提案書が何冊も発行されています。
以下のように、当サイト開設以後、同様にベーシックインカム書について他サイトでシリーズ化したものを紹介してきました。

1.小沢修司氏著『福祉社会と社会保障改革 ベーシック・インカム構想の新地平』(2002年刊)を読む:ベーシックインカム書から考えるBI論シリーズ-1(2021/10/14)
2.『ベーシックインカムとジェンダー 生きづらさからの解放に向けて』(2011年刊):<ベーシックインカム書から考えるBI論>記事シリーズ-2(2021/10/15)
3.ルトガー・ブレグマン『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(2017年刊):<ベーシックインカム書から考えるBI論>記事シリーズ-3(2021/10/20)
4.『ベーシックインカムを問いなおす その現実と可能性』(2019年刊)より:<ベーシックインカム書から考えるBI論>記事シリーズ-4(2021/10/22)
5.『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(2021年刊)より:<ベーシックインカム書から考えるBI論>記事シリーズ-5(2021/10/23)
6.井上智洋氏著『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』(2021年刊)を読む:ベーシックインカム書から考えるBI論シリーズ-6(2021/11/13)
7.「『生活保護解体論』から考えるベーシック・ペンション」シリーズ:2022年書籍記事シリーズ紹介-2(2022/2/2)
8.<『公共貨幣』による「公共貨幣論」の理解考察とベーシック・ペンション>シリーズ:2022年書籍記事シリーズ紹介ー3(2022/8/1)
9.苫米地英人氏・西野卓郎氏のベーシックインカム論:2022年書籍記事シリーズ紹介ー5(2022/10/28)


初めの3冊は、2017年以前の出版ですが、他は、2018年以降のもの。
上記リスト以外でも、https://2050society.com の中で、数冊取り上げ、紹介し、考察しています。

グローバル社会視点でのベーシックインカム考察と日本独自の視点による考察

そのほとんどは、日本の社会保障制度や経済状況などを背景としてのベーシックインカム論であり、ガイ・ステンディング氏のグローバル社会を対象とした教科書的記述よりも身近に感じられるのは当然です。

ガイ氏の基本認識が、社会正義や共和社会主義を軸としていること、そして非常に多くの国や地域のベーシックインカムの試験的プロジェクトや執筆当時の状況等の紹介に多くの紙面を費やしていることに、本書の特徴があります。
そして、執筆時点の同氏のベーシックインカム実現については、その機運が高まっているという楽観的認識が示されているのですが、今日に至るまで、状況が進展しているとは言い難いでしょう。

わが国では、もちろんこの数年において、コロナ禍における特別定額給付金の支給や、国政選挙時における複数の野党のベーシックインカムもどきの公約が掲げられ、ベーシックインカムが注目されているかのような報道もありました。
しかし、政治をめぐる状況は、劣化した閣僚や国会議員の低レベルのスキャンダル問題や、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した各種安保問題とインフレ対策、そして内閣支持率の低下、そして縦割り官庁単位での毎年恒例の予算折衝デジャビュと、真摯に社会問題に取り組む政治的動きはみられません。
すなわち、いくらベーシックインカムを教科書的に、歴史的に、グローバル社会動向と情報をなぞってみても日本のベーシックインカムをめぐる状況に影響を与えているとか、何かしら前進をもたらしているという感覚は、微塵もないように思えてしまいます。

ガイ氏のBI論は、グローバル社会における普遍性を前提とするとも言えますが、各国・各地域の実情は個別の、独自のものであり、共通性・普遍性で括って、実現のための方策を論じることには無理があります。
実践論は、社会保障制度や経済システム、そして何より政治システムと政治体制など、個々・個別の事情、制度・システム等の条件の基に、検討・考察され、実現のためのプロセスをも描き、伝え、拡げていく必要があるわけです。

一応それなりに、ここ2~3年、種々のベーシックインカム論書を手に取り、自身が提案するベーシック・ペンション案が少しずつでも現実味、可能性が増していくようにと、複数のWEBサイトにおいて比較考察を続けてきています。
その姿勢は変わること、変えることはありませんが、次年度2023年は、その内容の精度を高めていくことはもちろん、訴えかけの方法や対象等を、これまでと変えていくべきと考えています。
「ベーシックインカムへの道」ではなく「ベーシック・ペンションへの道」を探る行程を、思いも新たにして辿っていきたいと思います。

少しずつ、よくなる社会に・・・


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