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異次元の少子化対策でも少子化は止められない3つの構造的要因(上)人口構造要因:総務省2022年10月人口推計から

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年間出生児数80万人割れ、歯止めがかからない少子化

総務省が4月12日に発表した、2022年10月1日時点の人口推計。
外国人を含む総人口は前年同期比で55万6000人減少し、1億2494万7000人(12年連続減少)。
日本人人口は75万人減少し、1億2203万1000人(1950年以降最大の減少)。
出生児数79万9000人、死亡者数153万人で、出生児数が死亡者数を下回る自然減少は16年連続。
15歳未満人口1450万3000人で過去最低。
65歳以上高齢者3623万6000人で総人口比29%で過去最高。

この発表では、80万人を僅か割る程度?となっているが、2021年10月~2022年9月までの出生数であり、2022年暦年では、77万人に近い数と予想されている。

「歯止めがかからない」と評価・表現されている少子化。
新年度上期中には、岸田内閣による「異次元の少子化対策」が具体的にまとめられ公表されるはずだが、果たしてその成果はいかに。
といっても、だれも簡単に出生数が増えるとは思っていまい。

異次元の金融緩和をもってしても、デフレからの脱却もインフレターゲット実現も叶わなかった。
その「異次元」性は、少子化対策においても効力は期待できないだろう。

少子化対策効果を阻む3つの構造的要因


今後も当分の間少子化抑止を拒むに違いない要因。
種々あるが、私は以下の3つの構造的要因を挙げておきたい。

1.人口構造要因:結婚・出産行動を想定可能な女性人口の継続的な減少
2.雇用・労働構造要因:高い就労・所得不安に直結する経済的不安をもつ非正規雇用者構成比の高さと婚姻・出産回避行動
3.心理的・精神的構造要因:多様な生き方・働き方を選択可能とする価値観の拡大と容認する社会構造の進展

今回は、その中の<人口構造要因>について、簡単に述べたい。
(以下掲載する「人口ピラミッド」出典は、グラフで見る! 日本の出生数の推移(住民基本台帳ベース)【出所】総務省 国勢調査及び国立社会保障・人口問題研究所 将来推計人口、総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数 (gdfreak.com) で確認できます。)

20歳~39歳女性人口の推移予測

以下に、昨年2022年1月1日を先ず初めに記し、2025年以降、5年毎の20歳から39歳までの女性の人口の推移の予測値を順に並べた。
(<総務省 国勢調査>及び<国立社会保障・人口問題研究所 将来推計人口>、<総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数>を基に GD Freak! が作成した資料から抜粋したデータから加工転載したもの。)

・2022年 13,032,293人 (総人口比:10.3%)
・2025年 約1,206万人 (  〃 : 9.8%)
・2030年 約1,157万人 (  〃 : 9.7%)
・2035年 約1,114万人 (  〃 : 9.7%)
・2040年 約1,054万人 (  〃 : 9.5%)
・2045年 約 989万人 (  〃 : 9.3%)

同資料では、「出産や子育ての中心となる若い女性に着目」して徹底した<20歳~39歳>人口、としている。
しかし、現実には、出産年齢は、次第に高くなる傾向にあるので、本来ならばより年齢幅を広げるべきと考えるが、すぐに活用できるデータをということで、お許し頂きたい。

出産行動を起こす可能性のある女性人口が、継続的に減少する

上記の「出産や子育ての中心となる若い女性」という捉え方において、「若い」という捉え方、基準に問題がある。
また、少子化対策としては、出産に先行して結婚があるべきで、婚姻率を高めるための施策も不可欠と考えている。
であれば、「出産や子育て」に「結婚」を加えて、「結婚、出産や子育て」とすることが望ましいとも考える。
しかし、出産は、結婚を前提とするのが(未だに)日本の社会の通念とされているが、婚姻を絶対条件とはせず、婚外子の出産もその意志の有無にかかわらず可能である。
そう考えれば、「結婚」を敢えて加える必要はないことになるが。

いずれにしても、出産してもらえる女性の絶対数が、この20年、30年間に及ぶ少子化、出生数の減少の結果を受けて、減り続けてきたわけだ。
そして、今後も、上記のように、5年単位でみると、20歳から39歳までの女性人口は、40万人~70万人程の幅で減り続けると予測されている。

これでは、現状の1ポイント台前半の合計特殊出生率に留まっていてまったく問題にならず、仮に2ポイント台まで上昇しても、数十年間は、人口増には至らず、なんとか維持できるようになれば、と言えるのでは、と思われる。
(いずれ、何かしらのシミュレーションの情報・資料を探してみたいと思っているが。)

要するに、出産に結びつく結婚や、出産自体の行動を志向・選択し、またそれが可能な、女性そしてそのパートナーである男性の絶対的人口が、今後も継続して減り続けるわけだ。
ゆえに婚姻数の減少、出生数の減少とその結果としての少子化は、先述した他の2つの構造的要因とも関係する経済的・社会的諸条件の余程の改善・向上が見られない限り、必然であり、抑制・抑止することは不可能であろう。

次回は、構造的要因の2、<雇用・労働構造要因>について、考えてみたい。

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