鈴木宣弘氏著『農業消滅 農政の失敗が招く国家存亡の危機』:勝手に新書-2

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昨日2021/11/30に何とか駆け込みで11月中に読み終えた、鈴木宣弘氏著『農業消滅 農政の失敗が招く国家存亡の危機』(2021/7/15刊・平凡社新書)に大きなインパクトを受けました。

今回は、<勝手にしん書>シリーズの2冊目に同書を取り上げます。

鈴木宣弘氏著『農業消滅 農政の失敗が招く国家存亡の危機』(2021/7/15刊・平凡社新書)

初めに著者のプロフィールを、同書から引用転載しました。

鈴木宣弘氏プロフィール

1958年生、東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門農業経済学。
東京大学農学部卒、農林水産省、九州大学大学院教授を経て現職。
FTA産官学共同研究会委員、食料・農業・農村政策審議会委員、財務省関税・外国為替等審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員、コーネル大学客員教授等歴任。

ともすれば、最近の農業に関する書は、明るい未来を描くことが多いのですが、かつて農水省官僚であり、政府の種々の審議会委員を歴任した氏の農政批判書は、見過ごされがちで忘れられがちな、重要な問題を、えぐり出し、強い危機感をもつべきことを主張します。

表紙帯にある本書PR文

食と農を犠牲にした貿易の自由化、
種子法廃止・種苗法改定などの制度変更、
改革という名の農協解体・・・・。

農業従事者を苦しめる政策が続けば、
日本は必ず、飢餓に陥る。

食料の確保は、
軍事・エネルギーと並ぶ安全保障の要である。


表紙裏部の本書エッセンス紹介文

徹底した規制緩和で、食料関連の市場規模はこの35年で1.7倍に膨らむ一方、食料自給率は38%まで低下。
ノウギョウの総収入は12.3兆円から9.7兆円へと減少し、低賃金に、農業従事者の高齢化と慢性的な担い手不足もあいまって、”農業消滅”が現実のものになろうとしている。
人口増加による食料需要の増大や気候変動による生産量の減少で、世界的に食料の価格が高騰し、輸出制限が懸念されるなか、
日本は食の安全保障を確立することができるるのか。
農政の実態を明かし、私たちの未来を守るための展望を論じる。


 以上のPR文だけでは、農業と食料をめぐる重大な問題を理解することはできません。


WEBサイト 2050society.com における<食料・農業安全保障政策>


実は、食料と農業等をめぐる安全保障問題については、WEBサイト、https://2050society.com で取り扱っています。
2050年の望ましい日本社会創造を考える同サイトでは、以下の4つのカテゴリーで展開。
 1)国土・資源政策 2)社会政策 3)経済政策 4)国政政策
このうちの「国土・資源政策」で<3.食料、農・畜産・水産業安全保障・維持開発管理>というジャンルを設定し、以下の(基本方針)と(個別重点政策)を提起しているのですが、本書を読み、一部修正すべきと考えさせられました。

基本方針)
さまざまなリスクに対応できる食料自給自足国家とその持続可能な社会システムを2050年までに構築し、その基盤の下にグローバル社会に貢献できる食料のサプライチェーンモデルも構築する。
(個別重点政策)
3-1 食料自給自足国家社会の拡充:農地実態調査、未耕作地集約、自治体別強化農産品目決定
1)食料品種別自給率調査及び長期自給率目標策定 (~2025年)
2)農地生産地実態調査、未耕作地等未利用地実態調査 (~2025年)
3)目標自給率実現品種・生産地域計画立案 (~2030年) 、都道府県別農産政策立案 (~2030年)、
  取り組み進捗・評価管理(2031年~)
  ※最重点品目:小麦
4)食料品危機管理システム整備構築(~2030年)
3-2 農・畜産・水産業の長期総合政策策定と持続的取り組み
1)畜産部門自給自足長期計画、振興支援計画策定、都道府県別計画策定 (~2030年) 、各進捗・評価管理
2)水産部門、遠洋・近海漁業保全計画策定、養殖分野長期計画策定 (~2030年)
3)グローバルサプライチェーン長期方針及び計画立案 (~2030年)
4)畜産物・水産物危機管理システム整備構築 (~2030年)
3-3 食品・飲料製造産業の水平・垂直統合
1)食品・飲料製造産業原材料調達・内外依存度等実態調査及び長期方針 (~2030年)
2)基礎食品・飲料指定化と自給自足可能度評価、対策立案 (~2030年)
3)都道府県別受給可能度調査及び緊急時国内サプライチェーン構築計画 (~2030年)
4)グローバルサプライチェーン長期方針及び計画立案(~2030年)

それは、次の理由からです。

『農業消滅』から読み取る3つの安全保障と2050長期ビジョンへの反映


すなわち、本書により、農と食料、次の2つの領域とそれを統合する1つの視点での安全保障政策が必須であることを気付かされたのです。

1)食料の自給自足システム構築による国民生活と国家の安全保障
2)食料の安全安心生産・供給・管理システム構築による国民生活の健康安全保障
3)上記の食料の2領域での安全保障を実現する、産業としての農業とその資源としての農地及び農家・農業人の安全保障


以上の観点から、今後上記サイトにおいて、本書を掘り下げて紹介しながら、上記の(基本方針)と(個別重点政策)事項を見直しつつ、具体的な考察・提案作業を今後進めていきたいと考えています。

小口広太氏著『日本の食と農の未来』(2021/9/30刊・光文社新書)

なお、同書とは趣を異にしますが、 本書の後に出版された、小口広太氏著 『日本の食と農の未来 「持続可能な食卓」を考える』 (2021/9/30刊・光文社新書) も上述サイトでいずれ取り上げ、その政策の具体化に参考にしたいと考えています。

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