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素直に喜んでいいのか、大卒女性の出生子ども数の増加。その要因・背景の裏を読む:「2021年出生動向基本調査」より

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少しずつ、よくなる社会に・・・

国立社会保障・人口問題研究所2022年9月9日公表「2021年出生動向基本調査」より

2022/10/10付日経に、以下のタイトルの記事が。
大卒女性、子ども数増 昨年45~49歳調査 両立支援など影響

国立社会保障・人口問題研究所の(結婚と出産に関する基本調査=)『2021年出生動向基本調査』に基づくものだが、その内容の通り、高学歴の大卒女性が生み育てる子ども数が増える傾向にあるというもの。

妻が大卒以上の夫婦の子どもの数、19年ぶりに上昇

<社会経済状況別にみた妻 45~49 歳夫婦の出生子ども数>という括りでの「夫と妻の教育水準」という要素での調査結果。

妻が大卒以上の夫婦の子どもの数が、前回2015年調査の1.66人から1.74人へと、なんと19年ぶりに上昇したという。
調査は、出産できる期間をほぼ終えた45~49歳の妻を対象としている。
分析では、育児と仕事の両立支援により、働いていても子どもを産む女性が増えたことが影響している可能性を指摘している。
比較的恵まれて仕事と子育ての両立支援制度を活用できるのは、正規社員として大卒女性を多く採用し、そこそこの処遇を得ている大企業に多いことが想定できる。
働き方改革に関する法律に規定する以上の条件も整備する大手企業や成長業種であるIT企業では、一層、大卒女性を活かすことができ、本人もやりがいをもって仕事と子育てを両立しうる社会経済的基盤が広がっているわけだ。

▢は中高卒、○は専修・短大・高専卒、△が大卒以上
※■●▲は、異なる分類によった年度

パワーカップルと非パワーカップルの格差拡大の影響?

これはこれで喜ばしいことだが、反面、留意しておくべき現実がある。
こうした、子どもを多く持つことを望み、実践できるカップルは、経済面での不安がない、恵まれた、いわゆるパワーカップルに多いのではないか。
わが国における長期にわたる出生率減少傾向の大きな要因に、非正規雇用の増加、長期化するデフレ経済やコロナ禍による雇用不安などがもたらす非婚・未婚者の増加、子どもの教育費負担や婚姻に関わる生活上の経済的負担に対する不安が挙げられている。
大都市圏に偏るであろうパワーカップルの存在に対して、中小企業が多く、都市圏に比べて就職・就労条件にハンデを持つ地方の男女が、希望する結婚や子どもを生み育てることをためらう現状が想像できる。
多面的な格差が拡大を続けているわけだ。

特に2010年以降で「30代で結婚した都市部、大卒、リベラルな女性」の出生率上昇が顕著であるという別の調査分析も紹介されている。
例えば、大手商社Iでは、2010年度0.94だったの女性社員の出生率が、2021年度には1.97になったという類で、これは国の合計特殊出生率1.33をも大きく上回る。

減少が続く、中高卒女性が産む子どもの数

しかし、大卒女性の出生数が増えるのは喜ばしいが、前掲のグラフで分かるように、中高卒女性及び専修・短大・高専卒女性の子どもの数とも(大卒女性よりも若干多いが)このところ減少を続けていることに注目しておく必要があろう。
前者は2015年は1.94だが、2021年は1.92、後者は同じく1.85から1.81に減少している。
ここからも、経済的な理由などから中低所得者層が産みにくくなってきている状況が想像できるだろう。
先述の大卒女性での増加傾向が続けば、中卒・高卒の女性が産む子どもの数が逆転する可能性もあるわけだが、全体的な出生数の増減傾向だけでなく格差拡大趨勢を加味すれば、むしろ問題は拡大しつつあるとことにもなるわけです。

子育てや教育にお金がかかりすぎるから理想の数の子どもを持たない、持てない

同調査報告中に、<夫婦が理想の数の子どもを持たない理由>についての結果をグラフ化した以下のものがあります。


年次ごとには、若干減少する傾向がありますが、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を理由に上げる夫婦が変わらず最も多くを占めていることに、今回の結果からの推測・推計に妥当性があることが示されていると言えるかと思います。
細かくて読みづらいかもしれませんが、注釈併せてお読み頂ければと思います。

なお5年毎のこうした調査動向だけでなく、毎年発表される人口動態統計ももちろん並行して注視していく必要があります。

従来、こうした人口動態統計に基づく出生数の動向などについては、別サイト https://2050society.com で、例えば
少子化と結婚しない人の増加、その背景・要因:2021年人口動態統計からの欠かせない視点(2022/6/10)
などの記事として取り上げてきています。
今回は、トピックス的に、当サイトで取り上げました。

経済的要因を背景とした少子化の決め手、ベーシックインカム=ベーシックペンション生活基礎年金提案

なお、こうした少子化及び非婚・未婚化の背景の一つとされる経済的要因への対策の決め手として、前記の記事を受けた形で、同様展開する他サイト http://basicpension.jp で投稿した以下の記事で、日本独自のベーシックインカム、ベーシックペンション生活基礎年金制度の導入を提案しています。
同サイトの他関連記事とも併せて、お時間とご興味がありましたら確認頂ければと思います。

出生数への影響は婚姻数への影響も含めて、ベーシック・ペンションのみ可能(2022/6/11)

少しずつ、よくなる社会に・・・

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